はじめに
保育所等訪問支援は、日本の児童福祉法に基づく障害児向けの支援制度の一つです。障害のある児童が通う保育所、幼稚園、小学校などに支援員が訪れ、集団生活に適応するための専門的な支援を提供するものです。この支援は主に2種類に分かれており、一方は児童本人を対象とした直接支援で、集団や療育場面を観察しながら集団生活への適応を目的に関わりを提供するものです。もう一方は間接支援といい、担任の先生や児童に関わる園のスタッフを対象にしたものです。
対象児童
この制度を利用することができるのは児童福祉法に定められた「障害児」で、保育所等の施設に通っている児童、および集団での生活や適応に専門的な支援が必要と判断された場合に限られています。
また、「保育所等訪問支援」という名称から誤解されがちですが、訪問先は保育園や幼稚園に限らず、小学校や特別支援学校も含まれます。
保育所等訪問支援は、障害児が障害児以外の児童との集団生活に適応するための専門的な支援を提供することを目的としています。支援は、児童の身体や精神の状況、環境に応じて適切かつ効果的に行われ、児童だけでなく、保育所等のスタッフに対しても行われ、発達支援の向上にも寄与するものとされています。
訪問対象となる施設
保育所等訪問支援は、障害のある児童が集団生活を営むための支援を提供するサービスであり、以下のような施設で実施されることがあります。
保育所（ほいくしょ）:
保育所は、主に就学前の子供たちが日中過ごす場所であり、保育士によって保護と教育が提供されます。保育所では、障害のある子供たちも含め、子供たちが安全かつ健やかに成長できるようにサポートが提供されます。
幼稚園（ようちえん）:
幼稚園は、主に3歳から6歳までの子供たちが通う教育機関であり、基本的な学習や社会性の育成が行われます。幼稚園でも障害のある子供たちに対する支援が必要とされることがあります。
小学校（しょうがっこう）:
小学校は、基本的な教育が提供される場所であり、障害のある子供たちにも適切な支援が必要です。保育所等訪問支援により、障害のある子供たちがクラスや学校活動に適応し、他の子供たちとの交流を持てるようにサポートが提供されます。
特別支援学校（とくべつしえんがっこう）:
特別支援学校は、障害のある子供たちに特別な支援を提供する学校であり、障害の程度や種類に応じて適切な教育とサポートが提供されます。保育所等訪問支援は、特別支援学校の教育プログラムを補完し、障害のある子供たちが更なるサポートを受けることができます。
これらの施設では、保育所等訪問支援により専門の支援員が訪問し、障害のある児童の集団生活をサポートします。このサービスは、障害のある児童が集団の中で適切に振る舞い、社会的交流を持てるようにすることを目的としています。
保育所等訪問支援の成果
保育所等訪問支援の具体的な成果や事例についていくつかの事例をご紹介します。以下に示す事例は、保育所等訪問支援がどのように実施され、どのような影響をもたらすかを理解する助けとなるでしょう。
事例交流プログラム
2019年9月15日に開催されたフォーラムでは、保育所等訪問支援事業に関わる事業所と自治体や学校の担当者が集まり、それぞれの視点から保育所等訪問支援について話し合うプログラムが実施されました。このような交流を通じて、産官学民連携を考えるきっかけとなりました。
具体的な支援事例
一例として、幼稚園での椅子の使用や給食時の食べこぼしを減らす工夫について、保育士と作業療法士（OT）が対応し、相談を提供しました。
別の例では、小学校での登校時に3階の教室までの移動を安全に行う方法や、歩行補助具の安全な使い方について、保育士と理学療法士（PT）が本人と担任に助言、指導、および相談を提供しました。
地域連携と環境改善
保育所等訪問支援事業は、一人の子どもを幸せにするだけでなく、地域連携を促進し、子どもを取り巻く環境を改善し、支援員自身や事業所全体の支援品質を向上させる可能性を秘めた事業とされています。
これらの事例や情報は、保育所等訪問支援が児童、教育機関、および地域社会にどのように利益をもたらすかを示しています。また、これらの事例は、保育所等訪問支援が個別のニーズに対応するだけでなく、より広いコミュニティと連携して効果的な支援を提供する方法を探求することの重要性を強調しています。
直接支援と間接支援、個別支援との違い
保育所等訪問では支援員が保育所等を訪問するにあたって支援を行います。殆どの場合は直接支援と間接支援が行われます。個別支援が必要な場合は他の施設と連携することが求められます。
- 直接支援は、児童が集団の中でどう振る舞うかを支援するサービスです。支援員が児童と一緒に活動に参加し、適切な社会的交流や行動を促進するための支援を提供します。
- 間接支援は、担任の先生やスタッフに対する支援で、集団生活の運営に関する助言や指導を提供します。これにより、児童が集団の中でより良い経験を得ることができます。
- 個別支援は、特定の児童の個別のニーズに焦点を当て、個別の計画や対応を提供するサービスです。しかし、保育所等訪問支援では個別支援の対応は難しいため、個別支援を必要とする児童は児童発達支援や放課後等デイサービスを利用することが適切であると考えられます。
保育所等訪問支援の問題点
保育所等訪問支援に関連する問題点を考慮すると、以下のような点が挙げられます：
社会的認知の低さ:
保育所等訪問支援は比較的新しいサービスであり、その存在や利点が広く知られていない可能性があります。これにより、必要としている家庭や施設がこのサービスを利用する機会を逸してしまう恐れがあります。
支援員の質:
保育所等訪問支援の効果は、大きく支援員の質に依存します。資格や経験、専門知識を持つ支援員の確保が困難である場合、サービスの質が低下し、結果的に障害児の支援が不十分となる可能性があります。
依頼の主体の問題:
保育所等訪問支援の依頼は親御様からのものでなければならないため、保育所や学校が自らの意向で支援を受けることが困難であり、これがサービス利用のハードルとなっています。
支援員の可用性:
訪問支援員のスケジュールや人数の制約により、必要な支援をタイムリーに提供することが困難となる場合があります。
個別支援の難しさ:
保育所等訪問支援は主に集団での活動を支援することを目的としており、個々の児童の個別のニーズに対応するのは難しい場合があります。個別支援は児童発達支援や放課後等デイサービスの利用が適切であるとされています。
これらの問題点は、保育所等訪問支援の拡充や利用促進、さらにはサービスの質向上に影響を与える可能性があります。それぞれの問題に対処し、適切な解決策を見つけることが重要であり、これにより障害のある児童がより良いサポートを受けることが可能となります。
保育所等訪問支援を提供するメリット
保育所等訪問支援は、障害を持つ児童が日常生活を送る上で必要なサポートを提供するための重要なサービスです。放課後等デイサービスや児童発達支援の事業者がこのサービスを提供することで得られるメリットは数多くあります。
サービス範囲の拡充
保育所等訪問支援を提供することで、事業者はサービスの範囲を拡充し、多様なニーズに対応する能力を高めることができます。これにより、事業者は地域社会におけるニーズに応じてより広範なサービスを提供することができ、それにより事業の競争力を高めることができます。
地域社会との連携強化
保育所等訪問支援を通じて、事業者は地域の保育所や学校、その他の関係機関と連携を強化し、地域社会との関係を構築することができます。これは、事業者の社会的責任を果たし、地域社会に対する評価を向上させることにも寄与します。
新たな収益源の創出
保育所等訪問支援は、事業者にとって新たな収益源となる可能性があります。これにより、事業者は経済的な安定と事業の持続可能性を向上させることができます。
専門性の高いスタッフの養成
保育所等訪問支援を提供することで、事業者はスタッフの専門性を高め、より高いレベルのサービスを提供する能力を磨くことができます。これは、事業者の評価を向上させ、より多くの家庭や施設から信頼を得ることができます。
法的な枠組みの利用
保育所等訪問支援は法律で定められているサービスであり、法的な枠組みのもとで運営することが可能です。これにより、事業者は法律や規制の変更に対応しやすくなり、事業のリスクを低減することができます。
保育所等訪問支援を提供することで、事業者は障害のある児童へのサポートを向上させ、地域社会に対する貢献を強化することも可能となります。また、地域社会との連携を深め、新たな収益源を創出することで、事業の持続可能性を高めることができます。
まとめ
保育所等訪問支援は、障害を持つ児童とその家族にとって、日常生活の質を向上させるために重要な役割を果たしています。また、放課後等デイサービスや児童発達支援の事業者にとっても、サービス範囲の拡充や新たな収益源の創出、地域社会との連携強化など、多くのメリットをもたらす可能性があります。しかし、保育所等訪問支援には社会的認知の低さや支援員の質に依存するなどの問題点も存在しています。これらの問題点を克服し、質の高いサービスを提供していきたいです。
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