
障害児の通所支援は通常、受給者証を取得し国保連に電子請求を行う仕組みで完結します。しかし保護者がいない、虐待で緊急保護中など「やむを得ない事由」で申請が難しい子どもは、自治体が児童福祉法21条6に基づきサービス利用を“措置”し、事業者に費用を支払います。この通称「措置請求」は放課後等デイサービスだけでなく児童発達支援でも同様に機能します。
厚生労働省の通知では、措置を行った場合は速やかに障害児通所給付費の決定を行い、利用者負担額を0円とし、市町村が全額を負担すると示されています(通所利用者負担額算定基準)。つまり生活保護世帯等であっても家庭負担を心配せずにサービス開始が可能です。
現場では、自治体が発行する「措置決定通知書」を受け取った事業者が、翌月10日までに「措置費請求書」や明細書を自治体へ郵送またはオンライン提出し、支払いはおおむね翌々月に行われます。神戸市では請求締切を毎月10日、支払日を翌月20日と定めており、綾瀬市でも様式第3号で同様のフローを明文化しています。申請様式や提出方法は自治体ごとに細部が異なりますが、国のガイドラインに沿った共通フレームのため、初めての事業所でも概要を把握すれば迷うことはありません。
児童発達支援を提供する事業所にとって措置請求は「最後の砦」です。受給者証の取得が困難な状況でも、児童の発達や安全を最優先に早期支援を開始し、後から費用回収を確実に行える仕組みが担保されています。自治体担当者との連携を密にし、様式・締切を確認しておけば、経営面の不安を最小化しながら子どもたちを支えることができるでしょう。
なお、措置請求が適用されるケースは決して多数派ではありません。ケースが発生したときは上記のことをご参照頂き、確実に処理を進めることが大切です。
参考資料
- 厚生労働省「やむを得ない事由による措置(障害児通所支援)に係る通知」厚生労働省
- 綾瀬市「障害福祉サービスに係るやむを得ない事由による措置実施要綱」city.ayase.kanagawa.jp
- 神戸市「障害児通所措置費・入所措置費の請求手続き」神戸市