厚生労働省は2025年12月、障害福祉サービス報酬の臨時改定案を発表しました 。今回の改定で最も注目すべきは、2026年6月から「新規事業所」に限り基本報酬を引き下げるという、制度史上でも異例の措置です 。
この文章を読んでいる方は既にアルバトロスをご利用の方が多いと思います。すぐには影響しませんが新規事業所の開設には注意が必要です。
改定の背景:想定を大幅に上回る予算増
令和6年度の障害福祉サービス総費用額は、前年度比で12.1%増という急激な伸びを記録しました 。 政府はこれまで年5〜6%程度の伸びを想定して予算を確保してきましたが、実際の費用はその想定を大きく上回っています 。この急増を抑制し、制度の持続可能性を確保することが今回の臨時改定の主な目的です 。

放デイ・児発への具体的な影響
今回の「新規事業所の報酬引き下げ」対象には、以下の4類型が含まれています 。
- 放課後等デイサービス
- 児童発達支援
- 就労継続支援B型
- 共同生活援助(グループホーム)

既存事業所と新規事業所の違い
- 既存の事業所: 報酬は維持され、今回の引き下げ措置による直接的な影響はありません 。
- 新規の事業所: 2026年(令和8年)6月以降に新たに指定を受ける事業所は、それぞれの収支差率に応じ、一定程度引き下げられた基本報酬が適用されます 。
自治体への調査では、ニーズ調査を十分に行わずに参入するケースも報告されており、今回の改定には「安易な開設ラッシュ」に歯止めをかける狙いもあります 。
今後の展望と経営判断
この措置は、2027年度に予定されている次回の本格的な報酬改定に向けた「臨時応急的」なものです 。
今後、新規開設を検討されている事業者様にとっては、以下の点が重要な判断材料となります。
- 施行時期の意識: 報酬引き下げを避けるには、2026年(令和8年)5月までの開設が必要です 。
- 事業承継の検討: 「新規指定」が対象となるため、ゼロからの立ち上げではなく、既存事業所の「事業承継」という形を取ることが戦略的な選択肢となる可能性があります。
- 質の高い運営: 予算抑制の動きが強まる中、今後はより「支援の質」や「地域ニーズへの適合」が厳しく問われる時代へとシフトしていくことが予想されます 。
地域の福祉を支え、これからさらに盛り上げようと志す法人にとっては、冷や水を浴びせられるようなバッドニュースと言わざるを得ません。現場を苦しめる物価高騰への抜本的な対策も置き去りにされたままであり、制度の持続可能性という名の下に、志ある事業者の参入や熱意が削がれてしまうことが危惧されます。
