障害児の通所支援は通常、保護者が受給者証を取得し、事業所が国保連を通じて障害児通所給付費を請求する流れで行われます。
一方で、里親、ファミリーホーム、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設などに措置・委託されている障害児が、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などの障害児通所支援等を必要とする場合には、通常の給付決定ではなく、児童福祉法第21条の6に基づく「やむを得ない事由による措置」としてサービス利用が行われることがあります。
この場合、事業所は国保連ではなく、措置を行った市町村に対して費用を直接請求します。
この手続きが、実務上「措置請求」と呼ばれることがあります。
この記事では、放課後等デイサービス、児童発達支援、保育所等訪問支援などを運営する事業所向けに、措置請求の基本的な考え方、対象となる児童、手続きの流れ、請求時の注意点を整理します。

措置請求とは
措置請求とは、児童福祉法第21条の6に基づく「やむを得ない事由による措置」により、障害児通所支援等を利用した場合に、事業所が市町村へ委託費を請求する手続きです。
通常の障害児通所支援では、保護者が市町村から通所受給者証の交付を受け、事業所は国保連を通じて障害児通所給付費を請求します。
しかし、措置児童の場合、保護者による通常の申請や契約手続きが難しいケースがあります。
そのため、市町村が「やむを得ない事由による措置」として支援利用を決定し、障害児通所支援等の事業所へ支援を委託します。
このときの費用は、通常の国保連請求ではなく、事業所から市町村へ直接請求することになります。
通常の国保連請求との違い
措置請求と通常の国保連請求の大きな違いは、請求先と根拠となる手続きです。
通常の障害児通所支援では、事業所は国保連を通じて障害児通所給付費を請求します。
一方、やむを得ない事由による措置の場合は、国保連を通じた請求はできません。
こども家庭庁の事務処理要領でも、措置による委託費の請求は、障害児通所給付費等の請求に関する省令の対象とはならないため、国民健康保険団体連合会を通じた請求はできないとされています。
そのため、事業所は措置を行った市町村に対して、請求書や明細書などを用いて直接請求します。
対象となる児童
措置請求の対象となるのは、主に以下のような児童です。
- 里親に委託されている障害児
- ファミリーホームに委託されている障害児
- 乳児院に入所している障害児
- 児童養護施設に入所している障害児
- 障害児入所施設に入所している障害児
これらの児童は、こども家庭庁の事務処理要領では「措置児童」と整理されています。
措置児童が、発達支援、集団生活への適応支援、生活上の支援、外出や移動に関する支援などを必要とする場合に、児童相談所や市町村との調整を経て、障害児通所支援等の利用が検討されます。
対象となるサービス
措置児童が、やむを得ない事由による措置により利用できるサービスには、児童発達支援や放課後等デイサービスだけでなく、複数の障害児通所支援等が含まれます。
主な対象サービスは以下のとおりです。
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 保育所等訪問支援
- 居宅訪問型児童発達支援
- 居宅介護
- 同行援護
- 行動援護
- 短期入所
- 重度訪問介護
- 生活介護
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 就労選択支援
なお、重度訪問介護、生活介護、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型については、15歳以上の児童について、児童相談所が認めた場合に利用可能とされています。
令和8年3月31日付の改正では、新たに「就労選択支援」についても、措置児童が利用できるサービスとして追記されています。
そのため、特に中高生年代の児童を支援する事業所では、就労に向けた支援の選択肢としても確認しておく必要があります。
措置を行う市町村
やむを得ない事由による措置を行う市町村は、原則として保護者が居住する市町村です。
ここでいう保護者とは、原則として親権を有する者、いわゆる実親や、親権者が不明な場合の未成年後見人等が想定されています。
保護者の居住地については、住民基本台帳上の住所だけでなく、実際にその市町村内に居住しているかどうかも確認されます。
ただし、保護者が転居した場合や、保護者の居所が不明な場合には、児童への支援が途切れないよう、市町村間で調整を行うこととされています。
例えば、措置の手続き中や措置期間中に保護者が転居した場合でも、転居先の市町村が新たに措置決定を行うまでの間は、現在手続きを進めている市町村または現に措置を行っている市町村が、引き続き措置を行うことが基本とされています。
これは、児童が必要な支援を受けられなくなることや、児童養護施設等が費用負担をすることを避けるためです。
利用開始までの流れ
措置児童が障害児通所支援等を利用する場合の標準的な流れは、以下のとおりです。
1. 児童養護施設等が児童相談所へ相談する
まず、児童養護施設等は、措置児童を担当する児童相談所の児童福祉司に、障害児通所支援等の利用について相談します。
児童の発達状況、生活上の困りごと、集団生活への適応、医療的ケアの有無、行動面の課題などを踏まえ、外部の障害児通所支援等を利用する必要性を検討します。
2. 利用予定の事業所へ事前に打診する
児童相談所への相談を踏まえ、障害児通所支援等の利用を具体的に検討する場合、児童養護施設等は地域の事業所に対して、受け入れの可否を確認します。
この段階で、以下のような内容を確認しておくとスムーズです。
- 利用可能な曜日
- 利用時間
- 支援内容
- 送迎の可否
- 医療的ケアや強度行動障害への対応可否
- 受け入れ開始時期
- 必要な書類
- 個別支援計画作成までの流れ
3. 児童相談所が必要性を検討する
児童相談所は、児童の心身の状況、日常生活全般の状況、支援の必要性などを確認します。
そのうえで、障害児通所支援等の利用が必要と判断される場合には、児童の自立支援計画にその内容を位置付けます。
自立支援計画に位置付けられることで、単なる一時的な利用ではなく、児童の支援方針に沿ったサービス利用として整理されます。
4. 児童相談所が市町村へ相談する
児童相談所は、保護者の居住地を確認し、その市町村に対して、やむを得ない事由による措置について相談します。
児童養護施設等が直接市町村に相談することも妨げられていませんが、その場合でも、児童相談所が調整状況を把握しておくことが重要です。
5. 市町村が措置の必要性と支給量を検討する
市町村は、児童相談所から共有された自立支援計画の内容を踏まえ、やむを得ない事由による措置を行うかどうかを検討します。
検討にあたっては、通常の給付決定と同様に、5領域11項目の調査等により、児童の状態や必要な支援量を確認することが基本とされています。
児童養護施設等が遠方にある場合には、市町村が現地まで来所を求めるのではなく、児童相談所への調査委託や、テレビ電話装置等を活用した調査も可能とされています。
6. 市町村が措置決定・措置委託を行う
市町村が措置を行うと判断した場合、児童養護施設等に対して措置決定の通知を行います。
同時に、障害児通所支援等を提供する事業所に対して、措置委託を決定する旨の通知を行います。
通知様式に全国一律の定めはありませんが、一般的には以下のような事項が記載されます。
- 措置する児童の氏名
- 生年月日
- 住所または入所施設の情報
- 措置を開始する年月日
- 措置するサービスの内容
- 措置委託先の事業所名
- 事業所所在地
- 支給量
7. 事業所が重要事項説明と個別支援計画の作成を行う
措置委託を受けた事業所は、通常の利用者と同様に、重要事項説明を行います。
実務上は、児童養護施設等の職員が一般家庭における保護者に近い立場で関わるため、児童養護施設等の職員に対して重要事項説明を行うことが示されています。
そのうえで、事業所は個別支援計画案を作成し、児童養護施設等の同意を得て、個別支援計画に基づく支援を開始します。
費用負担について
やむを得ない事由による措置により、措置児童が障害児通所支援等を利用する場合、保護者および児童養護施設等から市町村への費用負担は免除されます。
つまり、児童養護施設等や保護者が、障害児通所支援等の利用者負担を負うことはありません。
事業所に対する委託費は、措置を行った市町村が支払います。
この点は、通常の障害児通所支援における利用者負担の仕組みとは異なるため、事業所側でも誤って児童養護施設等へ利用料を請求しないよう注意が必要です。
事業所から市町村への請求方法
措置による利用の場合、事業所は国保連を通じて請求することはできません。
そのため、事業所は、措置を行った市町村に対して、委託費を直接請求します。
請求にあたっては、障害児通所給付費等の請求に関する省令の様式を準用するなどして、提供した支援内容を市町村が確認できるようにすることが求められています。
実務上は、以下のような書類を提出することが一般的です。
- 措置費請求書
- サービス提供実績記録票
- 請求明細書
- 利用日数や支援内容が分かる資料
- 措置決定通知書または措置委託通知書の写し
- 自治体が指定する様式
ただし、請求様式、提出方法、提出期限、支払日は自治体ごとに異なります。
例えば、自治体によっては毎月10日を請求締切としている場合や、郵送提出、窓口提出、電子申請など提出方法を指定している場合があります。
したがって、措置請求を行う際は、必ず措置を行った市町村に対して、以下の点を確認してください。
- 請求締切日
- 請求書の様式
- 明細書の様式
- 実績記録票の要否
- 提出方法
- 提出先部署
- 支払予定日
- 請求単位数や加算の算定方法
- 返戻や修正があった場合の対応方法
措置請求で事業所が注意すべき点
措置請求は通常の国保連請求とは異なるため、事業所内で事前に確認しておくべき点があります。
国保連請求と混同しない
最も重要なのは、通常の国保連請求と混同しないことです。
措置による委託費は、国保連請求ではなく、市町村への直接請求です。
誤って国保連へ請求しないよう、利用者管理や請求管理の段階で区別しておく必要があります。
措置決定の期間と支給量を確認する
措置決定には、開始日、サービス内容、支給量などが記載されます。
事業所は、支援開始前に必ず措置決定または措置委託の内容を確認し、決定された範囲を超えてサービス提供を行わないよう注意する必要があります。
個別支援計画を作成する
措置による利用であっても、事業所は通常の利用者と同様に、アセスメントを行い、個別支援計画を作成する必要があります。
児童養護施設等の職員、児童相談所、市町村と連携し、児童の状況や支援方針を踏まえた計画を作成しましょう。
自治体ごとの様式を確認する
措置請求の様式は、自治体によって異なる場合があります。
国の事務処理要領では基本的な考え方が示されていますが、実際の請求実務は市町村ごとの運用に従う必要があります。
そのため、初めて措置請求を行う場合は、必ず事前に自治体担当者へ確認しましょう。
令和8年度報酬改定に関する注意点
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定では、児童発達支援や放課後等デイサービスにも関係する見直しが行われています。
特に、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所については、一定の場合に応急的な報酬単価が適用されます。
具体的には、以下のような取扱いが示されています。
- 児童発達支援:所定単位数の1000分の988に相当する単位数
- 放課後等デイサービス:所定単位数の1000分の982に相当する単位数
ただし、以下のような場合は、応急的な報酬単価の対象外となることがあります。
- 主として重症心身障害児を通わせる事業所
- 離島・中山間地域等に所在する事業所
- 自治体が地域に特に必要であるとして設置する事業所
- 医療的ケア区分による基本報酬を算定する児童
- 強度行動障害児支援加算を算定する児童
- 人工内耳装用児支援加算を算定する児童
- 視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算を算定する児童
措置請求においても、委託費の算定にあたっては最新の報酬告示や留意事項通知を確認する必要があります。
特に、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所が措置児童を受け入れる場合には、通常単価なのか、応急的報酬単価の対象となるのかを、自治体と事前に確認しておくことが重要です。
措置請求が発生したときの確認リスト
実際に措置児童の利用相談があった場合、事業所は以下の点を確認しておくと安心です。
- 措置児童に該当するか
- 児童相談所が関与しているか
- 市町村による措置決定が行われる予定か
- 措置を行う市町村はどこか
- 措置開始日はいつか
- サービス種別は何か
- 支給量はどの程度か
- 送迎の取扱いはどうなるか
- 加算の算定可否はどうなるか
- 個別支援計画の同意者は誰か
- 請求先はどこか
- 請求様式は何を使うか
- 請求締切日はいつか
- 支払予定日はいつか
- 国保連請求と分けて管理できているか
措置請求は頻繁に発生する手続きではありませんが、発生した際には、通常の利用契約や国保連請求とは異なる処理が必要になります。
事業所内でフローを整理し、管理者、児童発達支援管理責任者、請求担当者が同じ認識を持っておくことが大切です。
まとめ
放課後等デイサービスや児童発達支援などの障害児通所支援では、通常、受給者証に基づき国保連を通じて請求を行います。
しかし、里親、ファミリーホーム、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設などに措置・委託されている障害児が支援を必要とする場合には、児童福祉法第21条の6に基づく「やむを得ない事由による措置」として、障害児通所支援等を利用することがあります。
この場合、事業所は国保連ではなく、措置を行った市町村へ委託費を直接請求します。
また、令和8年3月31日付の改正により、措置児童が利用できるサービスに就労選択支援が追記されるなど、対象サービスも更新されています。
措置請求は一般的な請求方法ではないため、ケースが発生した際には、児童相談所、市町村、児童養護施設等と連携しながら、措置決定の内容、支給量、請求方法、提出期限を必ず確認しましょう。
特に以下の点は重要です。
- 措置児童の支援利用は、児童相談所や市町村との調整が前提となる
- 措置請求は国保連請求ではなく、市町村への直接請求である
- 保護者や児童養護施設等の費用負担は免除される
- 請求様式や締切は自治体ごとに異なる
- 令和8年度報酬改定後は、最新の報酬単価や加算の取扱いを確認する必要がある
措置請求は、受給者証の取得や通常の契約手続きが難しい児童に対して、必要な発達支援や生活支援を届けるための重要な仕組みです。
事業所としては、制度の基本を理解し、自治体担当者と連携しながら、児童の支援が途切れないよう丁寧に対応していくことが求められます。
参考資料
- こども家庭庁「障害児支援施策」
https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku - こども家庭庁「措置児童が障害児通所支援等を利用する場合の事務処理要領」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/32675809-3f98-486b-9c03-efc695ede0bb/87497fa4/20260501_policies_shougaijishien_shisaku_36.pdf - こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定」
https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku/r8hoshukaitei - 神戸市「障害児通所措置費・入所措置費の請求手続き」
https://www.city.kobe.lg.jp/a95295/business/annaitsuchi/shogaifukushi/shinse/kunituchi-yoshiki/shogaiji-sekyu.html - 綾瀬市「障害福祉サービスに係るやむを得ない事由による措置実施要綱」
https://www.city.ayase.kanagawa.jp/material/files/group/14/yamuwoenaijiyuuniyorusoti.pdf
