個別支援計画の電子サイン・電子交付は認められる?

カテゴリー
お知らせ, 詳細, 運営・ノウハウ

児童発達支援・放課後等デイサービスの個別支援計画について、保護者の来所や書類の郵送にかかる負担を減らすため、電子サインや電子交付を導入したいと考える事業所も増えています。

電子サイン・電子交付は、「電子だから不可」とも「電子なら一律に認められる」とも断定せず、説明・文書による同意・交付という手続きを確実に行い、後から記録を確認できるかで判断することが重要です。

電子サインを取得しただけでは、計画内容を十分に説明したことや、完成版を保護者へ交付したことまでは確認できません。この記事では、電子サイン・電子交付を検討するときの判断軸、残しておきたい記録、導入前に自治体・指定権者へ確認したい点を整理します。

個別支援計画の説明・同意・交付をオンライン化したい方へ
▶ 電子サインの活用を見る

電子サイン・電子交付は手続き全体で判断する

電子サインを利用できるかは、署名の形式だけでなく、説明・同意・交付の一連の手続きが適切に行われているかで確認します。

個別支援計画では、作成した計画の内容について本人・保護者へ説明し、同意を得たうえで、計画を交付する必要があります。紙を使用する場合も電子的な方法を検討する場合も、この基本的な流れは変わりません。

手続き電子化するときの主な確認点
説明計画内容を伝え、本人・保護者が質問や意見を示せる機会を設けたか
同意誰が、いつ、どの計画に同意したのかを確認できるか
交付同意を得た完成版を、本人・保護者が確認・保存できる形で渡したか
保管計画、署名、日時、送付履歴などを後から確認できる状態で保存しているか

電子サインの記録があっても、説明や交付が確認できなければ、一連の手続きがすべて完了したとは判断できません。

電子サインは同意を記録する方法の一つとして検討する

電子サインを利用するときは、署名画像の有無だけでなく、同意した人、対象となる計画、同意日時を特定できることが重要です。

紙の署名では、個別支援計画に保護者が氏名や日付を記入する方法が一般的です。電子サインの場合も、後から見たときに、誰がどの内容へ同意したのか分かる状態にします。

同意した人を確認できるようにする

電子サインでは、対象となる本人・保護者と、実際に同意の操作を行った人の関係を確認できるようにします。

家族で共用しているメールアドレスや端末を使用する場合、記録上の送信先だけでは、誰が同意したのか分かりにくくなることがあります。氏名、続柄、連絡先など、事業所が本人確認に使用した情報を整理します。

同意の対象となる計画を特定する

電子サインの記録と個別支援計画を結び付け、どの計画期間・どの版への同意なのかを明確にします。

同じ利用者について、原案、修正版、完成版など複数のデータがある場合、署名記録だけを見ても対象となる計画を判断できないことがあります。

  • 利用者名
  • 計画の対象期間
  • 作成日または版番号
  • 同意を得た計画データ
  • 電子サインの日時

これらを対応させ、同意後に計画の内容が変更されていないか確認できる状態にします。

同意日時と操作履歴を残す

同意日は、電子サインを依頼した日ではなく、本人・保護者が実際に同意した日時を記録します。

依頼メールを送った日、計画を説明した日、電子サインが完了した日が異なることもあります。それぞれの日付を混同せず、実際の経過に沿って記録します。

電子サインだけで説明を済ませない

電子サインは同意を記録する手段であり、計画内容を説明する手続きそのものではありません。

個別支援計画のデータを送信し、「確認して署名してください」と依頼するだけでは、本人・保護者が目標や具体的な支援内容を十分に理解したか分からない場合があります。

オンラインで説明する場合も、次の内容を確認できるようにします。

  • どの方法で計画内容を説明したか
  • 誰に説明したか
  • 説明した日時
  • 目標や具体的な支援内容を説明したか
  • 本人・保護者から質問や意見があったか
  • 説明後に計画を修正したか

本人・保護者が質問できる機会を設け、計画の内容を理解したうえで同意できる流れを整えることが大切です。

説明後に計画を修正したら改めて同意を確認する

電子サインを得た後に目標や支援内容を変更した場合は、変更後の完成版について改めて説明し、同意を確認します。

修正前の計画へ電子サインを得た後で、事業所がデータを上書きすると、本人・保護者が同意した内容と事業所が保管する内容が一致しなくなる可能性があります。

修正が発生した場合は、少なくとも次の内容を確認します。

  • どの項目を変更したか
  • 変更した理由
  • 変更後の内容を説明した日
  • 変更後の計画へ同意を得た日
  • 本人・保護者へ交付した完成版

誤字の訂正など支援内容に影響しない修正と、目標や具体的な支援内容を変える修正を区別し、再説明・再同意が必要か判断します。

電子交付は「送信したこと」だけで判断しない

電子交付では、同意を得た完成版を本人・保護者が受け取り、内容を確認・保存できる状態にしたかを確認します。

メール、専用システム、オンラインストレージなどを利用してデータを送った場合でも、送信した事実だけでは、相手が正しい計画へアクセスできたか分からないことがあります。

同意済みの完成版を交付する

電子交付するデータは、本人・保護者が同意した内容と、事業所が保管する完成版を一致させます。

原案や修正前のファイルを誤って送らないよう、対象期間や版番号を明確にします。ファイル名だけでなく、計画書の中にも利用者名、計画期間、作成日などを記載し、対象となる計画を判別できるようにします。

交付日と交付方法を記録する

電子交付の記録には、いつ、誰に、どの計画を、どの方法で交付したかを残します。

  • 交付した日時
  • 交付先となる本人・保護者
  • 対象となる計画期間や版
  • メールやシステムなどの交付方法
  • 送信履歴や閲覧・受領を確認した記録

メールの送信履歴、システム上の交付履歴、保護者からの受領連絡など、事業所の運用に応じた方法で記録します。

本人・保護者が保存できる方法か確認する

一定期間だけ閲覧できる画面を見せるだけでなく、本人・保護者が計画を必要なときに確認できる状態を整えます。

電子データの閲覧期限、ダウンロードの可否、端末の利用環境などによっては、保護者が計画を十分に保管できない場合があります。電子交付を希望しない場合や利用が難しい場合に備え、紙での交付など別の方法も用意しておくと対応しやすくなります。

電子化しても残しておきたい記録

電子サイン・電子交付では、計画書本体だけでなく、説明から交付までの経過を一連の記録として残します。

記録確認したい内容
説明記録説明日、説明相手、説明方法、質問・意見、対応内容
同意記録同意者、同意日時、対象となる計画、電子サインの履歴
計画データ同意を得た完成版、対象期間、版番号
交付記録交付日、交付先、交付方法、送信・受領の履歴
修正記録修正箇所、修正理由、再説明・再同意の状況

電子データが複数に分かれる場合も、利用者ごとに計画、同意、交付の記録を対応させ、後から追えるようにします。

個人情報とデータ管理にも注意する

電子交付では、送信先の間違い、不正アクセス、端末の紛失などを想定し、個人情報を適切に取り扱う必要があります。

個別支援計画には、本人や家族の状況、発達上の課題、医療・学校に関する情報などが含まれることがあります。一般的な連絡よりも慎重な取扱いが必要です。

  • 送信先のメールアドレスや利用者アカウントを確認する
  • 第三者が容易に閲覧できない方法を選ぶ
  • 職員ごとの閲覧・操作権限を整理する
  • 退職者や異動者のアクセス権限を見直す
  • データの保存期間と削除方法を定める
  • 誤送信や端末紛失が起きた場合の対応を決める

電子化の利便性だけでなく、情報管理上のリスクも含めて事業所内の手順を整えます。

電子サイン・電子交付で避けたい運用

電子的な記録が残っていても、説明・同意・交付の実態を確認できない運用は避けます。

  • 計画を送信しただけで、説明を行ったことにしている
  • どの計画に対する電子サインか特定できない
  • 保護者以外が操作しても区別できない状態になっている
  • 電子サイン後に計画を上書きしている
  • 同意日を依頼メールの送信日として記録している
  • 交付した完成版と事業所保管分の内容が異なる
  • 送信履歴はあるが、交付先や対象となる計画が分からない
  • 保護者が電子データを利用できない場合の代替方法がない

システム上で処理が完了していることと、制度上必要な手続きが完了していることを混同しないようにします。

導入前に自治体・指定権者へ確認する

電子サイン・電子交付の取扱いを一律に判断せず、導入前に事業所所在地の自治体・指定権者へ確認することが重要です。

自治体によっては、電子的な方法を利用する場合の記録方法や、運営指導(実地指導)で提示する資料について、独自の案内を設けていることがあります。

確認するときは、単に「電子サインを使ってよいですか」と質問するだけでなく、予定している運用を具体的に伝えます。

  • 計画内容を説明する方法
  • 本人・保護者を確認する方法
  • 電子サインを取得する方法
  • 同意日時や操作履歴の保存方法
  • 完成した計画を電子交付する方法
  • 交付・受領記録の残し方
  • 事業所内でのデータ保管方法

確認した内容や回答日、確認先も記録しておくと、担当者が変わった後も事業所内で同じ運用を継続しやすくなります。

電子サイン・電子交付の基本的な確認手順

導入時は、説明、同意、交付、保管の流れを事業所内で整理してから運用を開始します。

  1. 自治体・指定権者の取扱いを確認する
    予定している説明・同意・交付の方法を具体的に伝えて確認します。
  2. 本人・保護者へ電子的な方法を説明する
    利用方法、交付方法、データの確認・保存方法を伝えます。
  3. 個別支援計画の内容を説明する
    オンラインの場合も、質問や意見を確認できる機会を設けます。
  4. 対象となる完成版を特定して電子サインを得る
    利用者名、計画期間、版、同意者、同意日時を対応させます。
  5. 同意済みの完成版を電子交付する
    本人・保護者が確認・保存できる方法で交付します。
  6. 説明・同意・交付の記録を保存する
    計画書本体と各履歴を利用者ごとに確認できるようにします。
  7. 定期的に運用状況を点検する
    未送信、未署名、未交付、誤送信、版の不一致などがないか確認します。

まとめ

個別支援計画の電子サイン・電子交付は、電子的な形式だけで可否を判断せず、説明・文書による同意・交付の目的を満たしているかで確認します。

電子サインでは、誰が、いつ、どの計画に同意したのかを特定できる状態にします。電子交付では、同意済みの完成版を本人・保護者が確認・保存できる方法で渡し、交付日や交付方法を記録します。

電子サインだけで説明や交付を済ませず、計画書、説明記録、同意履歴、交付履歴を一連の記録として残すことが重要です。導入前には自治体・指定権者の取扱いを確認し、事業所内で統一した手順を整えましょう。

参考資料

個別支援計画の説明・同意・交付をオンライン化したい方へ
▶ 電子サインの活用を見る