退職した職員から、児発管の研修を受けるので実務経験証明書を書いてほしい、と頼まれることがあります。この記事では、書く項目と日数の数え方、退職時の備え、発行の義務の範囲を整理します。
※この記事は2026年10月時点の告示・法令と、自治体・研修実施機関の資料をもとにしています。様式や提出方法は提出先ごとに異なるため、提出先の案内をご確認ください。

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実務経験証明書とは
児童発達支援管理責任者(児発管)の資格要件である実務経験を、勤務していた事業所が証明する書類です。要件は平成24年厚生労働省告示第230号に定められています。
| 経験の種類 | 必要な期間 |
|---|---|
| 相談支援、または保育士・児童指導員任用資格などを持つ人の直接支援 | 通算5年以上 |
| 上の資格を持たない人の直接支援 | 通算8年以上 |
| 社会福祉士・介護福祉士・看護師などの国家資格に基づく業務 | 通算5年以上 |
いずれも、老人福祉施設など一部の施設での期間を除いて、相談支援・直接支援が3年以上必要です。研修の修了も別に必要です。
年数は日数でも見られます。名古屋市の資料では、1年の実務経験を「業務に従事した期間が1年以上であり、かつ、実際に業務に従事した日数が1年あたり180日以上」と説明しています。この180日は、告示ではなく運用上の目安です。
証明書に書く項目
様式は提出先ごとに違いますが、内容はおおむね共通です。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 法人名・事業所名、所在地、電話番号 | 正式名称で書きます |
| 証明者の職・氏名 | 法人の代表者や事業所長などです |
| 押印、証明日 | 法人印または事業所印を押します(個人印は不可) |
| 対象者の氏名、フリガナ、生年月日 | 在職中の記録どおりに書きます |
| 実務期間 | 退職者は実際の退職日まで、在職中なら作成日までです |
| 施設・事業所名、事業の種類 | 事業の種類は、都道府県の実務経験一覧表の区分から選びます |
| 従事区分、職名 | 相談支援・直接支援などの別と、当時の職名です |
| 具体的な業務内容 | 下の「つまずきやすい点」をご覧ください |
| 従事した日数 | 休職などで従事しなかった日数と、差し引いた日数も書きます |
つまずきやすい点
- 具体的な業務内容は、「直接支援業務に従事」だけでは足りないとされることがあります。誰に、どんな支援をしていたかを1〜2行で書きます(例:「障害のある児童に対する、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練」)。
- 従事しなかった日数が無いときも「0」と書きます。空欄は出し直しになることがあります。
- 複数の事業所での経験は、事業所ごとに証明書を分けます。
- 訂正には訂正印を押します。
日数の数え方
様式によっては、「実務年数×180+実務月数×15」で日数に換算する欄があります。実際の日数が分からないときの計算で、「事業所で実務日数を把握している場合は、計算式にあてはめなくても可」ともされています。
| 1年の出勤日数 | 日数の出し方 |
|---|---|
| 180日以上(常勤や、おおむね週4日以上の勤務) | 換算式で足ります(実際より少なめに出ます) |
| 180日未満(週2〜3日の勤務など) | 契約上の勤務日数をもとに概算します。換算式は使いません |
週2日の勤務なら、5年在籍しても500日強です。換算式では900日となり、実際より多く証明してしまいます。
パートの人はタイムカードから1日ずつ拾わなければならないと考えられがちですが、制度がそこまで求めているわけではありません。契約上の勤務日数に在籍した週数を掛け、長い休みを差し引く概算でも出せます。通算が要件ぎりぎり(5年なら900日前後)のときは、判断が必要です。
1日の勤務時間の長さは問われず、短時間でも出勤した日は1日と数えます。
様式は提出先ごとに違う
実務経験証明書に国の統一様式はなく、自治体や研修実施機関がそれぞれ作っています。
| 提出先 | 使う場面 |
|---|---|
| 指定権者(都道府県・市) | 児発管を配置するときの指定申請・変更届 |
| 研修実施機関 | 児発管研修の受講資格の確認 |
研修用の様式には「研修受講資格確認のためのものであり、事業者指定要件を証明するものではありません」と書かれたもの(愛知県社会福祉協議会)があり、配置の届出に使えるとは限りません。この様式は、配置予定の法人が確認して作る方式で、前の勤務先が発行した証明書は要りません。月数の数え方も、1日でも従事した月を1か月とする様式と、30日で1か月とする様式があります。
国は手続きを減らす方向で動いています。令和6年4月の事務連絡で、指定申請の人員の添付資料は資格証・研修修了証の写しと管理者等の経歴書だけにし、押印・署名も求めないよう、自治体に求めました。ただ、自治体が独自に求めることもでき、実務経験証明書の押印を残している例があります。
- 兵庫県(障害児通所支援):初めて提出するときは、証明者の押印のある原本
- 沖縄県:実務経験証明書は引き続き証明者の押印を求める(写しも可)
- 八尾市:押印欄を廃止した書類から、実務経験証明書を除いている
令和5年度の国の調査でも、押印をすべて不要とする自治体は約3割で、125自治体のうち50自治体が、押印を求める文書に実務経験証明書を挙げています。
提出方法も、千葉県は電子申請(郵送も可、メールは不可)など、さまざまです。様式や提出方法は、本人を通じて提出先に確かめます。
退職するときに備えておく
退職時に証明書を書いておくと、あとで様式が合わない、証明日が古い、といったことが起きます。代わりに次の内容を1枚にまとめて残しておくと、様式が届いたときに転記するだけで済みます。押印は要りません。
- 在職期間、職名、従事区分
- 具体的な業務内容
- 雇用形態と、契約上の勤務日数
- 従事した日数と、休職などで従事しなかった日数
証明書を渡すときは、押印したまま空欄(宛先欄を含む)を残さないこと、「提出先に指定の様式があれば書き直します」と伝えておくことに気をつけます。
発行は法律上の義務か
根拠は労働基準法第22条第1項です。退職した労働者から請求されたら、使用者は次の5つについての証明書を、遅滞なく交付しなければなりません。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)
従事した日数・具体的な業務内容・相談支援と直接支援の別は入っていません。同条第3項は、労働者が請求していない事項を書いてはならないとしています。
| 項目 | 退職から2年以内 | 2年を過ぎてから |
|---|---|---|
| 在職期間・業務の種類・職名 | 請求されたら交付する義務がある | 請求権が時効で消える |
| 従事した日数・具体的な業務内容 | 法律上の義務はない | 法律上の義務はない |
2年は第115条の時効によるもので、厚生労働省も、退職から2年を過ぎると交付を受けられないこともあると説明しています。また、出勤簿などの保存義務は第109条で5年(当分の間は3年)で、実務経験の5年・8年より短い期間です。
書類の名前が「退職証明書」でも「実務経験証明書」でも、義務があるかは中身で決まります。在職中の職員の在職証明書は、22条(退職の場合の規定)の対象ではありません。
証明書が出ない場合も想定されています。宮城県は研修の受講申込みについて、前の法人が廃業して取れない場合は、雇用契約書などと、取得できない理由を書いた書類で受け付けるとしています。
事業所としてどう考えるか
児発管の実務経験は複数の事業所での経験を通算するのが前提で、自分の事業所も証明を頼む側に回ります。求められたら応じるのが基本です。そのうえで、次のように整理しておくと迷いません。
- 退職から2年以内なら、在職期間・業務の種類・職名は断れません。書くなら日数も添えるのが自然です
- 2年を過ぎた案件や、記録が残っていない案件では、無理に書きません
- 1年の出勤が180日に満たなかった人は、換算式を使わずに書きます
退職時に材料をまとめておけば、求められたときの負担はほとんどなくなります。
労務についての個別の判断は、社会保険労務士や労働基準監督署にご相談ください。
参考資料
- 平成24年厚生労働省告示第230号(障害児通所支援又は障害児入所支援の提供の管理を行う者としてこども家庭庁長官が定めるもの)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 退職時の証明の請求について(厚生労働省「確かめよう労働条件」)
- 障害福祉分野における手続負担の軽減について(令和6年4月12日 事務連絡)(こども家庭庁)
- 障害福祉分野における手続負担の軽減(指定申請等の様式の標準化等)(厚生労働省)
- 児童発達支援管理責任者の資格要件に係る実務経験について(名古屋市)
- 児童発達支援管理責任者(基礎研修)実務経験証明書(愛知県社会福祉協議会)
- 実務経験証明書 作成についての注意点(東北福祉カレッジ)
- 障害福祉サービスにおける各種行政手続き等の負担軽減に向けた調査研究 報告書(令和5年度障害者総合福祉推進事業)
- 障害児通所支援の指定申請(兵庫県)
- 押印の廃止について(沖縄県)
- 障がい児通所支援 新規指定関係書類(八尾市)
- 障害児通所支援の申請・届出様式(千葉県)
- サービス管理責任者等研修に係るQ&A(宮城県)
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