個別支援計画を作成するとき、本人や保護者から希望を聞き取っていても、支援目標や具体的な支援内容へうまくつなげられないことがあります。また、本人と保護者の希望が異なり、どちらを優先すべきか迷う場面もあるでしょう。
大切なのは、聞き取った言葉をそのまま転記することではなく、本人の意向、保護者の意向、事業所が把握した支援ニーズを分けて整理し、目標や支援内容へつなげることです。本記事では、意向確認を形式的な記載で終わらせないための考え方を整理します。

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本人と保護者の意向は分けて整理する
本人の意向と保護者の意向は、同じものとしてまとめず、それぞれ確認することが基本です。本人と保護者は置かれている立場が異なるため、希望することや困っていることが一致するとは限りません。
たとえば、本人は「友達と遊びたい」と希望している一方で、保護者は「集団の中でルールを守れるようになってほしい」と考えている場合があります。どちらか一方を採用するのではなく、それぞれが何を望んでいるのかを整理します。
| 整理する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 本人の意向 | 本人がやりたいこと、困っていること、安心できること、避けたいこと |
| 保護者の意向 | 家庭で困っていること、身につけてほしいこと、将来に向けた希望 |
| 事業所の見立て | アセスメントから把握した強み、支援ニーズ、必要な配慮 |
個別支援計画では、この3つを混同せずに整理したうえで、共通する方向性や優先して取り組む内容を検討します。
本人の意向は言葉だけで判断しない
本人の意向確認は、本人に直接質問して答えを得ることだけではありません。年齢や発達状況、コミュニケーションの方法によっては、言葉で希望を表すことが難しい場合もあります。
表情、行動、選択、反応、普段の様子なども、本人の意向を把握するための大切な情報です。
- 本人が自分から選ぶ活動や遊び
- 楽しそうに参加する場面
- 不安や拒否を示す場面
- 安心できる人、場所、関わり方
- 絵カード、写真、指差しなどによる選択
本人が言葉で「やりたい」と伝えていなくても、繰り返し選ぶ活動や、落ち着いて取り組める方法から意向を読み取れることがあります。ただし、職員の解釈だけで決めつけず、複数の場面や関係者から得た情報を確認することが大切です。
保護者の希望の背景まで確認する
保護者から「落ち着いてほしい」「言うことを聞けるようになってほしい」といった希望が示されることがあります。その言葉だけでは、どのような場面で困っているのか、何を目指しているのかが分かりにくい場合があります。
希望の言葉をそのまま目標にするのではなく、その背景にある生活上の困りごとや願いを確認することが必要です。
保護者へ確認したい視点
- どのような場面で困っているのか
- 困りごとは、いつ、どこで起きているのか
- 本人がどのような状態になれば生活しやすくなるのか
- 家庭ですでに工夫していることはあるか
- 保護者自身が負担に感じていることは何か
たとえば「落ち着いてほしい」という希望の背景に、「外出前の予定変更で混乱し、本人も家族も負担が大きい」という状況があるなら、予定変更への対応や見通しの持ち方が支援ニーズとして考えられます。
聞き取った意向をそのまま目標にしない
本人や保護者の意向は、個別支援計画を作成するための重要な出発点です。ただし、聞き取った希望をそのまま支援目標へ置き換えるだけでは、実際の支援につながらないことがあります。
意向を、現在の状況、強み、困りごと、生活環境と照らし合わせ、支援によって目指す状態へ整理することが必要です。
| 聞き取った意向 | 整理するときの視点 | 目標につなげる考え方 |
|---|---|---|
| 友達と遊びたい | どのような遊びを好むか、関わりで困る場面は何か | 安心できる少人数の場面で、相手と遊びを共有できるようになる |
| 自分で準備してほしい | 何の準備で困るか、どこまで自分でできるか | 手順を確認しながら、必要な持ち物をそろえられるようになる |
| 気持ちを伝えてほしい | 現在使える表現方法や、伝えにくい場面は何か | 言葉や絵カードを使い、自分の希望や不快を伝えられるようになる |
例文をそのまま使用するのではなく、本人の現在の状態と、実際の生活場面に合わせて調整します。
本人と保護者の意向が異なる場合の考え方
本人と保護者の意向が異なること自体は、珍しいことではありません。その場合、どちらかを正しいものとして一方的に選ぶのではなく、それぞれの意向の背景を確認します。
本人の思いを尊重しながら、安全面、生活上の必要性、発達状況、家族の状況を含めて支援方針を検討することが重要です。
意向が異なるときの整理手順
- 本人が希望していることと、その理由を確認する
- 保護者が希望していることと、その背景を確認する
- アセスメントから本人の強みや支援ニーズを整理する
- 両者に共通する目的がないかを探す
- 事業所として支援できる内容と役割を説明する
- 一定期間後に確認する内容を決める
たとえば、本人は「一人で過ごしたい」と希望し、保護者は「集団活動に参加してほしい」と希望している場合があります。この場合は、本人が集団を避ける理由や負担を確認したうえで、安心できる時間や場所を確保しながら、無理のない範囲で参加できる方法を検討します。
意向の違いをすぐに解消しようとするのではなく、本人と保護者へ支援方針を説明し、経過を見ながら調整することも必要です。
事業所としての支援方針を明確にする
本人や保護者から示された希望を、事業所がすべてそのまま実施できるとは限りません。事業所の役割、支援体制、安全面、他機関との役割分担などを踏まえて検討する必要があります。
希望を受け止めることと、希望どおりの支援を無条件で計画へ入れることは同じではありません。事業所として何を支援できるのか、その理由を分かりやすく説明します。
- 事業所の支援場面で取り組めること
- 家庭と協力して取り組むこと
- 学校、医療、相談支援などと連携して確認すること
- 安全面や本人の負担から慎重な検討が必要なこと
- 今回の計画期間では優先しないこと
すべての希望を一度に目標へ盛り込むと、計画の優先順位が分かりにくくなります。本人の生活への影響や必要性を踏まえ、計画期間内に優先する内容を絞ることも大切です。
意向を支援目標と具体的な支援内容へつなげる
本人・保護者の意向を個別支援計画へ反映するには、意向欄へ記載するだけでなく、支援目標や具体的な支援内容とのつながりを確認します。
「何を望んでいるか」「現在どのような状況か」「事業所が何を支援するか」を一つの流れとして整理することがポイントです。
計画へ反映する基本的な流れ
- 本人と保護者の意向をそれぞれ確認する
- 意向の背景にある困りごとや願いを整理する
- アセスメントから強みと支援ニーズを確認する
- 優先して取り組む課題を決める
- 本人が目指す状態を支援目標として表す
- 目標に向けた事業所の働きかけを具体的な支援内容として記載する
意向と目標の関係が分かりにくい場合は、「この目標は、本人または保護者のどのような希望につながっているか」と問い直すと整理しやすくなります。
本人の意向確認を形式的にしない
個別支援計画に「本人の意向」と記載されていても、毎回同じ文章になっていたり、保護者の希望だけが書かれていたりすると、本人の思いが十分に反映されているか分かりにくくなります。
本人がどのような方法で意思を示したのか、どの場面で確認したのかを事業所内で共有できるようにすることが大切です。
- 本人へ直接確認した内容
- 選択肢を示したときの反応
- 活動中に見られた好みや拒否
- 家庭や学校から得た本人の様子
- 前回の計画期間から見られた変化
本人の意思を完全に把握することが難しい場合でも、「確認できない」として終わらせず、本人が表現しやすい方法を検討し、継続して意向を確かめます。
説明・同意の場面でも意向を確認する
本人・保護者の意向は、原案作成前に一度確認すれば終わりではありません。個別支援計画の原案を説明する場面でも、聞き取った内容が適切に反映されているかを確認します。
計画の内容を分かりやすく説明し、本人・保護者の認識と事業所の支援方針にずれがないか確認することが重要です。
- 意向が支援目標へどのようにつながっているか
- 事業所が行う具体的な支援は何か
- 家庭や関係機関と協力する内容はあるか
- 今回の計画で優先した理由は何か
- どのような変化をモニタリングで確認するか
説明時に新たな希望や状況の変化が確認された場合は、必要に応じて原案を調整し、計画内容を共有します。
モニタリングで意向の変化を確認する
本人や保護者の意向は、本人の成長や生活環境の変化によって変わることがあります。そのため、作成時に確認した意向を固定的に扱わず、モニタリングでも改めて確認します。
目標の達成状況だけでなく、本人・保護者が現在どのように感じ、何を希望しているかを確認することが、次の個別支援計画につながります。
- 本人が支援や活動をどのように感じているか
- 本人の興味や希望に変化があるか
- 家庭での困りごとに変化があるか
- 保護者が新たに希望していることはあるか
- 現在の支援目標を続ける必要があるか
本人・保護者の意向と実際の支援結果を照らし合わせ、目標を継続するのか、支援方法を調整するのか、新たな目標へ移るのかを検討します。
計画へ反映できているか確認するチェックポイント
個別支援計画の作成後は、意向欄の記載だけでなく、計画全体につながっているかを確認します。
- 本人の意向と保護者の意向を分けて確認しているか
- 本人が意思を示しやすい方法を用いているか
- 保護者の希望の背景にある困りごとを確認しているか
- 意向とアセスメント結果を照らし合わせているか
- 意向が支援目標や具体的な支援内容につながっているか
- 事業所として支援できる範囲を説明しているか
- 説明・同意やモニタリングの場面で意向を再確認しているか
本人・保護者の意向が、計画書の一つの欄だけで完結していないかという視点で確認すると、形だけの記載を避けやすくなります。
まとめ
本人・保護者の意向を個別支援計画へ反映するには、それぞれの希望を分けて確認し、背景にある困りごとや願いまで整理することが重要です。
本人の意向、保護者の意向、アセスメントから把握した支援ニーズ、事業所としての支援方針をつなげることで、支援目標や具体的な支援内容を組み立てやすくなります。
意向を聞き取って記録するだけで終わらせず、計画の説明時やモニタリング時にも継続して確認し、本人の生活や成長に応じて見直していきましょう。
参考資料
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