児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援に関する資料では、インクルージョンという言葉が出てくることがあります。
インクルージョンとは、障害のあるこどもが、保育所、幼稚園、学校、地域などの場で、必要な支援や配慮を受けながら、できるだけ一緒に過ごし、参加しやすくする考え方です。
単に「同じ場所にいること」だけを意味するのではなく、こども一人ひとりの特性や困りごとを踏まえながら、安心して参加できる環境を整えていくことが大切です。

インクルージョンとは
インクルージョンは、直訳すると「包み込むこと」「含めること」という意味があります。
障害児支援の文脈では、障害のあるこどもを地域や集団生活から切り離すのではなく、必要な支援を行いながら、保育所、幼稚園、学校、地域の活動などに参加しやすくしていく考え方として使われます。
たとえば、こどもが集団活動に参加しづらい場合に、本人だけを別の場所に移すのではなく、活動の見通しをわかりやすくしたり、環境を調整したり、周囲の大人が関わり方を工夫したりすることが考えられます。
つまりインクルージョンは、こども本人を集団に合わせることだけを求める考え方ではありません。
本人に合った支援や環境調整を行いながら、こどもが安心して参加できる場を広げていくことが大切です。
みんなと同じにすることではない
インクルージョンという言葉は、「みんなと同じ場所で過ごすこと」と受け取られやすい場合があります。
しかし、障害児支援で大切なのは、単に同じ場所にいることではありません。
同じ場所にいても、本人が強い不安や負担を感じていたり、必要な配慮がないまま参加を求められていたりする場合、それは本人にとって安心できる参加とは言いにくいことがあります。
インクルージョンでは、本人が参加しやすい形を考えることが重要です。
たとえば、集団活動に最初から最後まで参加することが難しい場合でも、短い時間から参加する、見通しを示してから参加する、安心できる大人のそばで参加する、本人が得意な役割から参加するなど、さまざまな方法があります。
障害のあるこどもだけの課題ではない
インクルージョンは、障害のあるこどもだけが努力するものではありません。
こどもが過ごす環境や、周囲の大人の関わり方を見直すことも含まれます。
たとえば、音が苦手なこどもがいる場合、本人に「我慢すること」だけを求めるのではなく、音の刺激を減らす、落ち着ける場所を用意する、活動の流れを事前に伝えるといった工夫が考えられます。
また、ことばで気持ちを伝えることが難しいこどもには、絵カードやジェスチャー、表情、視線など、本人に合った伝え方を使うことも支援になります。
このように、インクルージョンは、本人の特性と環境の両方を見る考え方です。
障害児支援でインクルージョンが重視される理由
こどもは、家庭、保育所、幼稚園、学校、地域など、さまざまな場で生活しています。
児童発達支援や放課後等デイサービスでの支援だけでなく、こどもが実際に過ごす場所で安心して参加できるようにすることは、生活全体を支えるうえで重要です。
令和6年度報酬改定の資料でも、インクルージョンの観点からの取組として、保育所等への移行支援や、地域との交流の機会の確保などが想定されています。
また、児童発達支援・放課後等デイサービスにおけるインクルージョンに向けた取組について、個別支援計画の参考様式やガイドラインで示す予定であることも説明されています。
保育所等訪問支援との関係
インクルージョンと関係が深いサービスのひとつに、保育所等訪問支援があります。
保育所等訪問支援は、こどもが通っている保育所、幼稚園、学校などを訪問し、本人への支援や、訪問先の職員への助言・援助を行うサービスです。
こどもが集団生活の場で過ごしやすくなるように、本人の特性や困りごとを確認し、訪問先と連携しながら支援を考えていきます。
たとえば、活動への参加が難しい場面、友だちとの関わりで困りやすい場面、音や人の多さに負担を感じやすい場面などを確認し、環境や関わり方を調整していきます。
こども家庭庁の資料でも、児童発達支援センターの中核機能の要件として、インクルージョンの推進体制を確保することが挙げられており、保育所等訪問支援の実施や、地域の保育所等への助言援助等が例示されています。
地域とのつながりも大切
インクルージョンは、保育所や学校だけに限られません。
こどもが住んでいる地域の中で、安心して参加できる場を増やしていくことも大切です。
地域の行事、遊び場、習い事、公共施設での活動など、こどもが生活する場はさまざまです。
もちろん、すべての場に無理に参加する必要はありません。
大切なのは、こども本人にとって負担が大きすぎない形で、参加できる選択肢を増やしていくことです。
そのためには、家族、事業所、保育所、学校、地域の関係者が、こどもの特性や必要な配慮を共有していくことが重要になります。
事業所でできるインクルージョンの取組
児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所では、日々の支援の中でもインクルージョンにつながる取組ができます。
たとえば、次のような取組が考えられます。
- こどもの特性や困りごとを整理する
- 保育所、幼稚園、学校などと情報共有する
- 集団生活で必要な配慮を個別支援計画に反映する
- 地域の活動や交流の機会を確認する
- 本人が安心して参加できる方法を考える
- 家族へ、集団生活や地域参加に関する相談援助を行う
- 訪問先や関係機関と、支援上の配慮を共有する
インクルージョンの取組は、大きなイベントを行うことだけではありません。
日々の支援の中で、こどもが人や場所とつながりやすくなるように、少しずつ環境を整えていくことも大切な取組です。
個別支援計画との関係
インクルージョンに向けた支援は、個別支援計画とも関係します。
こどもが保育所や学校、地域でどのように過ごしているのかを確認し、必要な支援を計画に反映することで、支援の方向性が整理しやすくなります。
たとえば、学校での集団活動が苦手なこどもに対して、事業所で順番を待つ経験や、気持ちを伝える練習を行うことがあります。
また、保育所で活動の切り替えに困っているこどもに対して、事業所でも見通しを持ちやすい支援を取り入れることがあります。
このように、事業所内の支援と、保育所・学校・地域での生活がつながるように考えることが大切です。
個別支援計画では、どの場面で、どのような参加を目指すのか、またそのためにどのような支援が必要なのかを整理しておくと確認しやすくなります。
インクルージョンで注意したいこと
インクルージョンを考えるときは、「参加させること」だけが目的にならないよう注意が必要です。
こどもによっては、集団生活や地域参加が大きな負担になる場合もあります。
そのため、本人の状態や特性、疲れやすさ、不安の強さ、感覚面の負担などを確認しながら、無理のない形で支援を考えることが大切です。
また、本人の意思や気持ちを確認することも重要です。
言葉で気持ちを伝えることが難しいこどもの場合でも、表情、身体の動き、発声、行動の変化などから、本人の感じ方を丁寧に読み取る必要があります。
インクルージョンは、本人の安心や尊厳を置き去りにして進めるものではありません。
インクルージョンは支援の結果でもある
インクルージョンは、最初からすべての場に参加できることを目指すものではありません。
日々の支援を通じて、本人が安心できる経験を積み、周囲の環境が整い、関係者の理解が進むことで、少しずつ参加しやすい場が増えていくことがあります。
その意味で、インクルージョンは、単独の取組というより、日々の支援の積み重ねによって生まれるものでもあります。
本人の発達や特性に合わせた支援、家族への支援、関係機関との連携、地域とのつながりが重なることで、こどもが安心して過ごせる場が広がっていきます。
まとめ
インクルージョンとは、障害のあるこどもが、必要な支援や配慮を受けながら、保育所、幼稚園、学校、地域などの場で参加しやすくなるようにする考え方です。
大切なのは、こどもを無理に集団へ合わせることではなく、本人の特性や気持ちを踏まえながら、環境や関わり方を整えていくことです。
児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援では、こどもの生活の場を意識しながら、保育所・学校・地域との連携を進めることが重要になります。
インクルージョンの取組を進めることで、こども本人が安心して参加できる場を増やし、家族や関係機関とも支援の方向性を共有しやすくなります。
事業所では、本人の安心、必要な配慮、関係機関との連携を大切にしながら、こどもが地域の中で過ごしやすくなる支援を考えていきましょう。
