令和6年度報酬改定では、医療的ケア児や重症心身障害児への支援について、複数の見直しが行われました。
医療的ケア児や重症心身障害児への支援では、日々の発達支援に加えて、医療的ケア、看護職員等との連携、安全な送迎、入浴支援、職員体制などを確認する必要があります。
特に医療連携体制加算は、区分が複数あり、どの加算が何を評価しているのかがわかりにくい項目です。
この記事では、児童発達支援・放課後等デイサービスに関わりやすい内容を中心に、医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅶ)の違いも含めて、事業所で確認しておきたいポイントを整理します。

医療的ケア児とは
医療的ケア児とは、日常生活や社会生活を送るうえで、医療的ケアを必要とするこどもを指します。
たとえば、喀痰吸引、経管栄養、酸素療法など、日常的に医療的な管理や処置が必要となる場合があります。
医療的ケア児への支援では、こどもの発達支援だけでなく、安全に医療的ケアを行える体制を確認することが重要です。
重症心身障害児とは
重症心身障害児とは、重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複しているこどもを指します。
日常生活の多くの場面で介助が必要となることがあり、姿勢保持、移動、食事、排泄、体調管理など、幅広い支援が必要になります。
重症心身障害児への支援では、こどもの身体状況や障害特性を踏まえ、安全性と支援の質を両方確認することが大切です。
医療連携体制加算は(Ⅰ)から(Ⅶ)まである
児童発達支援・放課後等デイサービスの医療連携体制加算には、(Ⅰ)から(Ⅶ)までの区分があります。
区分が多いため、最初に全体像を整理しておくと確認しやすくなります。
- 医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ):医療的ケア児以外の障害児に対して、看護職員が看護を行う場合
- 医療連携体制加算(Ⅳ)・(Ⅴ):医療的ケア児に対して、看護職員が看護を行う場合
- 医療連携体制加算(Ⅵ):看護職員が、認定特定行為業務従事者に喀痰吸引等に係る指導を行う場合
- 医療連携体制加算(Ⅶ):認定特定行為業務従事者が、喀痰吸引等が必要な障害児に対して喀痰吸引等を行う場合
簡単に整理すると、(Ⅰ)から(Ⅴ)は看護職員による看護を確認する区分です。
一方で、(Ⅵ)と(Ⅶ)は喀痰吸引等に関係する区分です。
(Ⅵ)は、看護職員が認定特定行為業務従事者に指導を行う場合です。
(Ⅶ)は、認定特定行為業務従事者が実際に喀痰吸引等を行う場合です。
請求時には、誰が対応したのか、何を行ったのか、対象児は医療的ケア児かどうかを分けて確認することが大切です。
医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ)の違い
医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ)は、医療的ケア児ではない障害児に対して、看護職員が看護を行った場合に確認する区分です。
この3つは、主に看護を提供した時間で分かれます。
- 医療連携体制加算(Ⅰ):1時間未満の看護を行った場合
- 医療連携体制加算(Ⅱ):1時間以上2時間未満の看護を行った場合
- 医療連携体制加算(Ⅲ):2時間以上の看護を行った場合
ここで確認したいのは、医療的ケア児に対する医療的ケアではなく、医療機関等との連携により看護職員が行う看護として整理できるかどうかです。
請求時には、対象児の状態、看護職員が対応した時間、看護の実施内容、記録を確認しておきましょう。
医療連携体制加算(Ⅳ)・(Ⅴ)の違い
医療連携体制加算(Ⅳ)と(Ⅴ)は、医療的ケア児に対して、看護職員が看護を行った場合に確認する区分です。
この2つは、主に看護を提供した時間と対象児の人数で確認します。
- 医療連携体制加算(Ⅳ):医療的ケア児に対して4時間未満の看護を行った場合
- 医療連携体制加算(Ⅴ):医療的ケア児に対して4時間以上の看護を行った場合
医療連携体制加算(Ⅳ)・(Ⅴ)では、対象児が1人か、2人か、3人以上8人以下かによっても単位数が分かれます。
そのため、請求時には、医療的ケア児として確認できるか、看護職員が対応した時間、対象児の人数、実施記録を確認することが大切です。
また、医療的ケア区分による基本報酬を算定している場合など、医療連携体制加算と重複して算定しない扱いがあります。
医療的ケア児への支援では、基本報酬、医療連携体制加算、看護職員加配加算などの関係もあわせて確認しておきましょう。
医療連携体制加算(Ⅵ)は喀痰吸引等の指導に関する区分
医療連携体制加算(Ⅵ)は、看護職員が、認定特定行為業務従事者に対して、喀痰吸引等に係る指導を行う場合に確認する区分です。
ここで重要なのは、医療連携体制加算(Ⅵ)は、看護職員が直接看護を行う(Ⅰ)から(Ⅴ)とは確認する内容が異なることです。
また、医療連携体制加算(Ⅶ)とも違います。
- 医療連携体制加算(Ⅵ):看護職員が、喀痰吸引等に係る指導を行う場合
- 医療連携体制加算(Ⅶ):認定特定行為業務従事者が、実際に喀痰吸引等を行う場合
つまり、(Ⅵ)は指導を確認する区分で、(Ⅶ)は実施を確認する区分です。
請求時には、看護職員がどのような指導を行ったのか、指導を受けた職員は誰か、喀痰吸引等の実施体制とどのようにつながっているかを記録で確認できるようにしておきましょう。
医療連携体制加算(Ⅶ)の見直し
医療連携体制加算(Ⅶ)は、喀痰吸引等が必要な障害児に対して、認定特定行為業務従事者が、医療機関等との連携により喀痰吸引等を行った場合に確認する加算です。
令和6年度報酬改定では、医療連携体制加算(Ⅶ)の単位数が見直され、100単位/日から250単位/日となっています。
また、これまで主として重症心身障害児を通わせる事業所で基本報酬を算定していた場合には算定できない扱いでしたが、改定後は、一定の場合に算定可能とされています。
ただし、医療的ケア区分による基本報酬を算定している場合や、看護職員を確保して医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅴ)で評価されている場合、主として重症心身障害児を通わせる事業所で看護職員加配加算を算定している場合などは、算定しない扱いが示されています。
そのため、医療連携体制加算(Ⅶ)を確認する場合は、喀痰吸引等の実施だけでなく、他の基本報酬や加算との重複にも注意が必要です。
医療連携で確認したいこと
医療的ケアに関する加算を確認する場合は、単に医療的ケアが必要なこどもが利用しているかどうかだけでは足りません。
次のような点を確認しておく必要があります。
- 医療的ケア児として市町村の判定を受けているか
- 医療的ケアの内容を確認できるか
- 看護職員が看護を行ったのか
- 看護職員が喀痰吸引等の指導を行ったのか
- 認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等を行ったのか
- 看護を提供した時間を確認できるか
- 対象児の人数を確認できるか
- 医療機関等との連携が確認できるか
- 他の医療系加算や基本報酬と重複していないか
- 必要な記録が残っているか
特に医療的ケアに関する内容は、こどもの安全に直結します。
請求のためだけでなく、実際の支援体制として、誰が、どの医療的ケアを、どの連携のもとで行っているのかを確認できる状態にしておくことが重要です。
入浴支援加算の新設
令和6年度報酬改定では、医療的ケア児または重症心身障害児に対して、発達支援とあわせて入浴支援を行った場合の評価として、入浴支援加算が新設されました。
単位数は、児童発達支援では55単位/回、放課後等デイサービスでは70単位/回で、いずれも月8回を限度とされています。
入浴支援は、こどもの清潔保持や日常生活の支援だけでなく、家族支援の意味もある支援です。
ただし、入浴を行えば自動的に算定できるものではなく、安全に入浴させるための設備や体制を整えていることが必要です。
入浴支援で確認したい体制
入浴支援加算を算定する場合は、入浴支援を安全に実施できる体制が必要です。
こども家庭庁の資料では、安全に入浴させるために必要となる浴室、浴槽、衛生上必要な設備を備え、衛生的な管理を行っていることが要件として示されています。
また、こどもの障害特性や身体状況を踏まえた安全な入浴体制も必要です。
確認したい内容としては、次のようなものがあります。
- 対象児が医療的ケア児または重症心身障害児であるか
- 安全に入浴できる浴室・浴槽・設備があるか
- 衛生管理ができているか
- こどもの身体状況に応じた介助体制があるか
- 入浴支援を行った日と内容を記録しているか
- 月8回の上限を超えていないか
入浴支援では、設備、職員体制、こどもの状態、実施記録をあわせて確認することが大切です。
送迎加算の見直し
医療的ケア児や重症心身障害児の送迎についても、令和6年度報酬改定で見直しが行われています。
医療的ケア児や重症心身障害児の送迎では、通常の送迎よりも安全面への配慮が必要になることがあります。
改定後は、医療的ケア児や重症心身障害児について、こどもの医療濃度等も踏まえた評価が行われるよう整理されています。
送迎加算では、通常の障害児の送迎に加えて、重症心身障害児や医療的ケア児の場合に加算される区分があります。
医療的ケア児の送迎で確認したいこと
医療的ケア児の送迎では、こどもの状態に応じて、看護職員の付き添いや安全確保のための体制が必要になる場合があります。
こども家庭庁の資料では、中重度医療的ケア児の送迎にあたっては、医療濃度も踏まえた安全な送迎に必要な体制を確保するものとされています。
確認したい内容としては、次のようなものがあります。
- 送迎対象が医療的ケア児または重症心身障害児か
- 市町村による児の判定が必要な場合、確認できているか
- 送迎時に必要な付き添い体制があるか
- 医療的ケアの内容や医療濃度を踏まえた安全確保ができているか
- 送迎の実施記録が残っているか
- 同一敷地内または隣接敷地内の送迎の場合、算定単位の扱いを確認しているか
送迎は日々の運用に入り込みやすい部分ですが、医療的ケア児や重症心身障害児の場合は、通常の送迎と同じ感覚で処理しないことが重要です。
共生型サービス医療的ケア児支援加算の新設
令和6年度報酬改定では、共生型サービス事業所において医療的ケア児を支援する場合の評価として、共生型サービス医療的ケア児支援加算も新設されています。
この加算は、共生型サービス事業所に看護職員等を配置し、医療的ケア児に対して医療的ケアを行うことに加えて、地域に貢献する活動を行っている場合に確認する加算です。
地域に貢献する活動としては、医療的ケア児への理解を促進する啓発活動、地域の交流の場の設置、保育所等での受入促進に向けた後方支援などが例示されています。
ただし、看護職員等の配置について、医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅶ)で評価されている場合には算定しないとされています。
他の加算との重複に注意する
医療的ケア児・重症心身障害児への支援に関する加算では、他の加算や基本報酬との関係を確認することが重要です。
たとえば、医療連携体制加算(Ⅶ)は、医療的ケア区分による基本報酬を算定している場合や、看護職員を確保して医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅴ)で評価されている場合などには算定しない扱いがあります。
共生型サービス医療的ケア児支援加算でも、看護職員等の配置が医療連携体制加算で評価されている場合は算定しない扱いが示されています。
そのため、請求時には、同じ体制や同じ支援内容を複数の加算で重複して評価していないかを確認する必要があります。
記録に残しておきたい内容
医療的ケア児・重症心身障害児への支援では、安全管理と請求確認の両面から、記録が重要です。
記録には、次のような内容を残しておくと確認しやすくなります。
- 対象児の判定や区分
- 医療的ケアの内容
- 医療機関等との連携内容
- 対応した職員
- 看護職員が対応した時間
- 対象児の人数
- 喀痰吸引等に係る指導内容
- 喀痰吸引等を実施した内容
- 入浴支援を行った日と内容
- 送迎時の付き添い体制
- 送迎時の安全配慮事項
- 加算の算定回数
- 他の加算との関係
医療的ケアや重症心身障害児への支援では、支援内容、職員体制、記録、請求内容がつながっていることが重要です。
請求時に確認したいポイント
医療的ケア児・重症心身障害児への支援に関する加算を確認する際は、次の点を見ておくとよいでしょう。
- 医療的ケア児または重症心身障害児としての判定を確認しているか
- 医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ)の場合、医療的ケア児以外への看護として整理できるか
- 医療連携体制加算(Ⅳ)・(Ⅴ)の場合、医療的ケア児への看護として整理できるか
- 医療連携体制加算(Ⅵ)の場合、看護職員による喀痰吸引等の指導内容を確認できるか
- 医療連携体制加算(Ⅶ)の場合、認定特定行為業務従事者による喀痰吸引等の実施内容を確認できるか
- 看護を提供した時間を確認できるか
- 対象児の人数を確認できるか
- 医療機関等との連携が確認できるか
- 医療的ケア区分による基本報酬や他の医療連携体制加算と重複していないか
- 入浴支援加算について、設備・体制・実施記録が整っているか
- 入浴支援加算の月8回上限を超えていないか
- 送迎加算について、医療的ケア児・重症心身障害児に必要な付き添い体制を確認しているか
- 送迎の実施記録や安全配慮事項を確認できるか
- 共生型サービス医療的ケア児支援加算の場合、看護職員等の配置と地域貢献活動を確認できるか
- 同じ体制や支援内容を、複数の加算で重複して評価していないか
安全な支援体制と請求内容の整合性が重要
医療的ケア児・重症心身障害児への支援では、まず何よりも安全な支援体制を整えることが重要です。
そのうえで、医療連携、入浴支援、送迎、共生型サービスでの支援など、実際に行っている支援内容が、加算の要件や記録と合っているかを確認します。
特に、医療的ケアや重症心身障害児への支援は、職員体制や設備、連携先、こどもの状態によって確認内容が変わります。
請求時には、対象児の判定、支援体制、実施記録、加算の重複を確認し、実際の支援内容と請求内容にずれがないように整理しておきましょう。
確認ポイント
医療的ケア児・重症心身障害児への支援では、加算の算定以前に、安全に支援できる体制が整っているかを確認することが大切です。
医療連携体制加算では、まず(Ⅰ)から(Ⅶ)までの区分を確認しましょう。
(Ⅰ)から(Ⅲ)は、医療的ケア児以外への看護を確認する区分です。
(Ⅳ)・(Ⅴ)は、医療的ケア児への看護を確認する区分です。
(Ⅵ)は、看護職員による喀痰吸引等の指導を確認する区分です。
(Ⅶ)は、認定特定行為業務従事者による喀痰吸引等の実施を確認する区分です。
医療連携、入浴支援、送迎支援、共生型サービスでの支援などは、それぞれ確認する要件や記録が異なります。
請求時には、対象児の判定、職員体制、設備、実施記録、他の加算との関係を確認し、支援内容と請求内容にずれがない状態にしておきましょう。
実際の算定や届出にあたっては、こども家庭庁の資料に加えて、関係する告示、通知、事務連絡、自治体からの案内も確認しておきましょう。
